茶道具商ながさか此一軸加州前田家より尾州関戸家伝来の一品也1 ぼ れりわ 横長 汝なが声さえ手た向むけ顔なる中臣祐基筆春日懐紙 降る雨に布ふ留る川か水の岸越えてさながら波と見ゆる卯の花(雨により春日社近くの布留川の水が岸を越え 神の坐ます岩瀬の杜もの郭公(神の鎮座する岩瀬の杜に鳴く郭ほ公よ、 影清き月も朧おろに見ゆるかな涙にくもる心迷ひに(煌々と照っている月さえも朧に見えてしまう春日懐紙は鎌倉時代初期の春日大明神法楽の為に奉納した和歌懐紙で奈良歌壇の実態を伝える貴重な懐紙として熊野懐紙に次いで尊重される。紙背に見えるのは万葉集で春日本万葉集と言われる。当懐紙には万葉集巻七巻末部分が書写されている。中臣祐基は春日若宮社の神宮で春日本万葉集を書写した中臣祐定の従兄弟にあたる。紅心宗慶詠三首和歌雨中卯花郭公聞杜月前増恋加賀前田家より関戸家伝来紅心宗慶箱一一五・五糎 六二・五糎雨中卯花岸辺の卯の花がまるで白波の様に見えるよ)郭公聞杜その声は神へ手向けている様に神妙に聞こえる)月前増恋恋の涙に暮れるこの迷い心には)ととぎす36
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